第六回 話をよく聞く事と、話を聞くだけの事と |
こんにちは、カウンセラーの山名です。今回は僕の下によせられるカウンセラーへの苦情についてお話します。 僕の下に来られる多くのクライエントの方は彼らが今まで出会ってきたカウンセラーに対してよくこうおっしゃられます。「話しか聞かない。」「何もアドバイスしてくれないし、愚痴をただ聞いているだけ。」「「私のカウンセリングはお話をじっくり聞くところから始めます。」と最初に宣言されたのですけれど、何回通ってもただ話しを聞いているだけ。」 初めのうちは僕も「そういう人もいるんだろうな〜。」と漠然と考えるだけだったのですが、それが何人も何十人もとなれば、「一体どういう事なんだろう?」と気になってきます。色々と自分なりに調べた結果一つの理論に辿りつきました。それはカール・ロジャース博士が考案した来談者中心療法と呼び、クライエントの話を傾聴し共感的理解を示していけば、クライエントは自分の中にある真の成熟していく力に気づき、自身の力で問題を解決していけるようになるという理論です。僕も大学院生時代にこの理論に取り付かれ、必死に文献を読みあさり実践を試みました。 この来談者中心療法を考案したロジャース博士は自分の理論に関して多くの研究を重ねその療法の効果を科学的に立証する事に成功しましたが、それでもこの理論には大きな問題点が2つあります。 1 つ目は来談者中心療法を実践するにはカウンセラー自身が「中立の立場」を確立する事が絶対であることです。カウンセラーがクライエントの話しを聞き、客観的に内容の理解や感じた事を伝えることにより、クライエントは自分の中にある力と正確に向き合う事が出来るようになるのですが、カウンセラーも人間である以上どうしても客観的にはなりきれません。客観的に事実が述べられないとカウンセリングはただの愚痴とオウム返しを繰り返すだけになってしまいます。それが出来るようになるには、長い年月をかけたトレーニングが必要となります。ロジャース博士没後、真の来談者中心療法者が現れないのはこの部分の難しさがあるからでしょう。 2 つ目は期間の長さです。ロジャース博士も認めている通り、来談者中心療法のカウンセリングには長い期間を要します。博士が理論を確立した頃の社会背景ではカウンセリングに長い期間をかけても特に問題はありませんでしたが、今はインターネットや様々なテクノロジーが普及した為に一日も早く問題を解決し、なるべく遅れを出さずに社会に復帰したいと多くの人間が望む時代です。今の社会において年単位のカウンセリングにかける時間は大きなロスとしてそのクライエントの今後の人生に反映されてしまいます。数回のセッションでなんとなく変わってきたではなく、 1 回のセッションで大きな効果が出るカウンセリングが現代社会のニーズには合致しているのです。その為、来談者中心療法を現代社会で一線級の療法として使うのは無理があります。 もちろん、来談者中心療法よりもその他の療法の方が優れているという事はありません。クライエントによっては来談者中心療法を中心に使ったカウンセリングを行う方が高い効果を得られる時もあります。このコラムで一番伝えたかった事はカウンセラーは「臨機応変」であるべきだと言うことです。「私のカウンセリングはお話をじっくり聞くところから始めます。」とカウンセラーが宣言してしまう事などあってはならない事です。そのクライエントが「話を聞くなどどうでも良いからとりあえず今の症状を軽減してくれ!」と望む方だったらどうするのでしょうか?心臓が悪く外科に行った患者に「僕は心臓のバイパス手術しかしないので、それでいきます!」と宣言する医者がいますか?色々な療法からその人、症状にあった術式を選びますよね。カウンセリングでもそうです。その人、症状にあった療法を選択し、組み合わせるのがごく普通の事のはずです。以前ココロ夢さんが行ったアンケートで「話を聞くだけの事に何千円も払うのは高すぎる!」という意見がありましたが、カウンセリングに対するそのような偏見を取り除ければなと常々願っています。カウンセラーは話を聞くだけではありません。カウンセラーはあなたが問題を早く解決できるように様々な提案をし、考えを促し、その中であなたに一番合った方法で問題解決までサポートしていく人達です。 ココロ夢カウンセラー 山名和樹 Mail: yamana@knhclinic.com |