個人心理学 皆様の中でメンタルヘルスのカウンセリングを受けたご経験のある方はいらっしゃいますでしょうか?その時に今までの人生の出来事、家族関係、身体的な事など色々とカウンセラーに質問されませんでしたか?実はそのスタイルはこの個人心理学の考えが大きく反映されているのです。 個人心理学の祖であるアルフレッド・アドラーは人間は人生の中で様々な影響を受け育っていく動物であると考えました。何かしらの外的影響を受けた人間はその事象を自分なりに解釈し吸収していく。精神病が起こるのは事象の解釈の仕方に問題があると考えました。つまり、カウンセリングとは事象の解釈の仕方を変えさせる行為なのです。今となっては当たり前の考えですが、フロイトの影響が強かった当時の心理学界では大変画期的な考え方でした。 個人心理学が特に重要視したのは家族関係。アドラーは人間は家族を通して世界を観察し、学んでいくと考えました。現代でも家族療法と個人心理学は切っても切れない仲となっています。 彼が立てたユニークなセオリーに「出産順位」があります。皆さんもテレビか何かで一度は聞いたことがある、長男はどういう性格になりやすく、次男はこういう性格になりやすいという考えかたです。実はその考え方の原点はこの個人心理学にあるのです。彼はクライエントの出産順位を知ることはその人を知る上で重要な情報だと考えました。ちなみに、彼は始めて会った人の出産順位を当てるのが好きだったそうです。 長男・長女ー 一度は一人っ子を経験し家族全ての注目を集めていた長男・長女は、2人目以降が生まれる事により、その注目を失います。その為、彼らは怒りやジェラシーを感じるようになり、自分がもう一度注目を得られるようになる為に家族を手伝ったり、必死に勉強をして学校で良い成績を取ったりと様々な努力をするようになります。家族の注目を失った彼らは、自分の居場所を家族の中に自分で作りあげるようになり、序所に責任感や信頼感を持つようになり、家族の中で需要な位置を得るように育っていきます。 次男・次女ー 長男・長女の存在の為、家族の中で上に立てない彼らは、長男・長女が出来ない分野を極めようとし、家族の中で自分の位置を確立する努力をするようになります。彼らは長男・長女の失敗を間近で見ている為、長男・長女よりも早いスピードで様々な能力を吸収していきます。一見、理想的な次男・次女の位置ですが、一歩間違えると注目を得る為に犯罪行為を起こしたり、長男・長女の能力の高さから劣等感を感じ自分のアイデンティティーについて悩むようになる危険性もあります。 真ん中の位置の子供ー 上には能力がすでに備わり家族の中で位置を確立しているお兄さん、お姉さん、下には家族にペットのようにかわいがられている弟、妹がいる彼らは、家族の中で自分の位置を確保できません。彼らは常に劣等感に悩まされる存在といってよいでしょう。 末っ子ー 常にペットのように家族にかわいがられる彼らは、責任感や信頼感とは無縁の世界にいます。常に家族から大切にされ、育てられた彼らは争いごとを拒みます。家族の中で一番やさしい心をもつ可能性の高い出産順位と言えるかもしれませんが、常に競争的な資本主義の社会においては大きなハンディキャップを背負っているともいえます。 一人っ子ー 生きている間ずっと家族の周りが大人だらけの彼らは、年上の人間との人間関係を上手く作る能力に長けています。しかし、同世代、下世代の人間との関係作りにはその経験の薄さから大きなハンディを抱えます。 アドラーはカウンセラーは常にクライエントを尊敬しサポートし続ける存在だと説きます。フロイト理論のカウンセラー像とは違い、個人心理学のカウンセラーは常に裏方の存在です。その点は現代カウンセリングの考えと非常に共通するものがあると言えるでしょう。 個人心理学はとにかく、情報を集める事に尽力をそそぎます。初めてカウンセラーの下を訪れたクライエントは 1.生活習慣について質問され、カウンセラーはそれらを一つずつ解釈していく 2.家族構成や出産順位についての質問 3.夢分析 (フロイトが行ったほどの重要なものではないが、情報を集めるための一つの手段) 4.もしも、1の生活習慣についての質問で過去について正確な情報を提供できなかったクライエントは過去についてさらなる質問を受けることとなる 5.毎日の行動や習慣についての質問 これら全ての質問を行った後、カウンセラーはそれらの情報を分析しクライエントとさらなる話し合いをもち、情報を修正し、その人にあった治療プランとゴールを作成する(個人心理学といわれるゆえんですね)。 カウンセラーは基本的に以下の技法を使いカウンセリングを進めていきます 1.仮定行動−クライエントが出来ないと考える行動を実際にやらせる。例えば、人前に出るのが怖いという問題を抱えるクライエントを5分でいいから人前に立たせる。 2.泥沼状況からの脱却ー クライエントが常に起こす問題を他の行動をさせる事により止める。例えば、お金の浪費癖が治らないクライエントに友達とずっと家で過ごすようにすすめ、全ての店が閉まるまで時間を経過させる。 3.自己理解ー 問題が起こるパターンを理解させ、その問題の起こる前兆があった時に自主的に止める術を身につけさせる。例えば、すぐにカッとなり、人に暴力を働いてしまう性格のクライエントに怒った時に起こる生理現象等を理解させ、自分の気持ちの落ち着け方を学ばせ、いざそれが起きた時にクライエントはすばやく深呼吸等で自分を落ち着かせ、人を傷つける前に行動を止めるようにさせる。 4.プッシング・ボタンー 問題解決から得られる達成感を強く意識させる事により問題行動を抑制させる。例えば、アルコール依存症のクライエントにアルコールから脱却した時に感じる喜びを強く意識させ、アルコールを飲んだ後の劣等感と恥じらい感とを葛藤させる。そして、いざ目の前にアルコールが現れた時にアルコールを飲まない達成感の喜びを強く感じさせることにより、それに手をつけなくなる。 5.クライエントに対しての提言ー カウンセラーがクライエントの発言の本質を見抜き、その本質から起こりうる、より的確な現実性を提言する。そうする事により、クライエントは問題行動から得られるはずの利益を得られなくなる。例えば、クライエントが「恋人と別れ、生きる気力もなくなったので自殺します。」と言うとします、そこでカウンセラーは「おそらく、あなたは自殺することによって恋人に罪の意識をもたせようとしているのでしょうけど、死んだらあなたはその恋人が本当に罪の意識をもったのかどうか分からないですよ。」と言う。 これらの技法のほかにカウンセラー自身がカウンセリング中に使う技法として 1.即時ー カウンセラーがセッション中に発見したクライエントとの関係のポイントについて提言する。そうする事により、クライエントは自分が持つ人間関係の問題点を理解する事が出来る。例えば、クライエントが「あなた私のこと嫌いですね。」とカウンセラーに言うとします。そこで、カウンセラーは「あなたは何時も人に対してそう考えておられるのですか?」と言う。そう提言する事により、クライエントは自分の人間関係における問題を見直す事ができる。 2.対立ー カウンセラーがクライエントの発言、行動の矛盾を指摘する。例えば、カウンセラーが「あなたは今、自分は誰にも愛されないと言いましたが、少し前に親元に帰るといいましたよね?それは親が自分を愛していると感じているからではないのですか?」と矛盾を指摘。 3.宿題ー カウンセラーがクライエントに宿題を出す。そうする事により、治療の進行のスピードアップのみならずクライエントは自分の治療に対して責任感を持つようになる。例えば、すぐに怒る性格のクライエントに対して、日に何回どういった理由で怒ったのか記述させる。 4.ユーモア、沈黙、アドバイス、感情への反映ー これらを巧みに使う事により、クライエントとの関係を良好化できたり、問題の好転化に大きな影響をおよぼす事となる。 アドラーのセオリー、技法ともその効果は科学的な根拠に裏打ちされた物が多く、近代のカウンセリングでも多く取り入れられています。特に前述した家族療法のみならず家族と接する機会の多い、スクールカウンセリングの分野でも多く受け入れられています。しかし、彼の使う技法は難解な物が多く、しっかりとした臨床経験を積んでいないカウンセラーが使うとクライエントを間違った方向に進める危険性が多いにあります。簡単に見えて、難しく、奥の深いのが個人心理学でありカウンセリングなのです。 参考文献 Seligman, L. (2001). Systems, strategies, and skills of counseling and psychotherapy.Prentice-Hall, Inc. NJ. 心理療法コーナー 精神分析 - 個人心理学 - 来談者中心療法 - ゲシュタルト療法 - 実在的療法 - NLP療法 - 催眠療法 - 認知療法
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