第十八回 一人の少年との出会い |
前回お話した通り、サックストーン先生は学業障害または行動に問題のある生徒の教育を助ける会議のコーディネーターで、日々の多くの時間をその準備に追われています。そのような問題を抱える生徒達をテストし、判定するサイコロジスト(心理鑑定員)との会議は毎週あり、その他にも書類作成、親へ招待状を送ったりと忙しい。会議は週に何度とあり、サイコロジストは毎回出席するわけではないがその生徒を担当している先生方、カウンセラー(この場ではサイコロジーコーディネーターとして出席)及び親で、サイコロジストの判定結果、授業中の様子、家での様子等を話し合い、その生徒への学校での特別措置を決めます。余談ですが親が来る事ははっきり言って稀で、ほとんどの会議は親抜きで行われます。数人の親は子供の教育にあまり関心がないようで、宿題を確認しない親もいるのは驚かされました。 そんなある日の会議での事。前のインターン(高校)でシュタンスプリング先生に「会議でもっと発言した方がいいよ。」と言われていた僕は今日こそはと何時もより真剣に耳を傾けていました。その会議はある一人の少年の行動に関する会議で、どうやら最近はエスカレートしてきて先生も手をつけられない状態らしい。困りに困った先生達は行動を抑制する薬の話を始めました(本当ならそんな話をしては駄目です(学校が薬を推奨した場合その費用は学校が負担しなければなりません。))。その会議は親も出席していて、親は自分の息子が薬漬けにされると思ったらしく、答えは「NO。」会議は平行線を辿りました。その時学校カウンセリングという場もよく分かっておらず、薬にも大反対だった僕はついに「あの〜」と言葉を発しました。先生方や親が一斉にこちらを見る中、僕は「薬を処方する前に出来る事はあると思うんです。僕に試させてもらえませんか?」会議は僕の発言により答えを導けないまま終了。結局、このケースは僕が関わっていくという事になりました。 会議の翌日、サックストーン先生がその少年を僕の所に連れて来ました。僕の想像とは違い小柄でやさしそうなその少年は照れくさそうに、だけど礼儀正しく僕に挨拶をしてきました。この時の僕は知りませんでした彼の本当の姿を、人間と関わっていく事の難しさを、そして彼が僕をスクールカウンセラーとして、人間として大きく成長させてくれることを・・・。 |