第二十一回 ふれあいと葛藤 (中) |
キャッチボールを一緒にしたその次の次の日「あんなに喜んでくれたので、きっともう大丈夫だろう!」と足取りも軽くインターンに行くと(僕のインターンは2日に一回でした)、サックストーン先生からの第一声は「昨日彼、問題を起こし今日は謹慎よ。」学校で学んできたこと、今まで本から学んだことでは完治とはいわないまでも、この方法によってある程度の行動改善は見込めるはずでした。それが次の日に問題行動を起こして謹慎とは・・・。「トリートメントを始めたばかりだし。」という考えと「もしも、これが上手くいかなったら僕はこの学校に邪魔しにきただけ?」という考えを一日中葛藤させながら僕はその日を終えました。 次にインターンに行った日、彼は何時も通り僕の所に顔を見せに来てくれました。「今度は何時キャッチボールをしてくれるの?」その愛くるしさから思わず「じゃあ、今日やろうか!」と言ってしまいそうでしたが、そこは心を鬼にして「この前問題起こして謹慎になったでしょう?一週間問題を起こさなかったらって約束でしょ。」と追い返したその午後、彼はまた問題行動を起こして謹慎処分にされたのでした。 「一週間は長すぎるのかな?」と思いその期間を3日に短縮しても結果は変わらず。「もっとキャッチボールの楽しさを伝えなければ効果はあがらないかな?」と思い、「特別」という言葉を使い何回か特例でキャッチボールをしてもやはり駄目。朝に僕の所に「今日はキャッチボールしてくれる?」と聞きにきて、「問題行動を起こしたでしょ。」と追い返すとキャッチボールが出来ないフラストレーションからか同じ日に必ず問題行動を起こし、それを繰り返してきた結果、問題行動を起こした後数日間は「どうせキャッチボールしてくれないんだろう!」と言わんばかりにふてくされ僕から話かけても無視されたり冷たくあしらわれたりする始末。 ある日、「キャッチボールの中にカウンセリングのエッセンスを組み込めば、彼も好きな事が出来るので協力的になり問題改善に繋がるのでは?」と思いつき、彼に提案したのは「今まで僕達は謝らなければいけない人に謝らなかったりしたよね。今日からはそのフラストレーションを吐き出す意味もこめて、ボールを投げるたびに口にだして、その相手に謝ってからお互いボールを投げるようにしよう!」お互い「お母さん〜して御免なさい」「おばさん〜して御免なさい」等言い合いながら投げあい、その途中途中にそのトピックについて深く話あったりしながら傍から見たら「何やってるんだろう?」と敬遠されそうなキャッチボールを毎日とはいきませんでしたが週に2・3回ペースで続けました。「ごめんなさい。」だけではなく「有難う。」というバージョンを入れたりもして、僕なりに色々と試行錯誤しましたが結果はとうとう変わらず。BDクラスの先生は僕の一生懸命な姿に気を使ってか「ちょっとは変わってきたよ。」と言ってくれたのですが、サックストーン先生に「いくらやっても全然変わってないんだからもう止めなさい!」と最後には怒られる始末でした。 サックストーン先生からキャッチボール禁止令を出され、先生方からも少なからずその効果の薄さ、その子を特別扱いしている事への批判もちらほら聞こえてきたので、ここが潮時かなとある日彼を呼び出し「今までキャッチボールを一緒にやってきたけど、もう出来ない。やっぱり行動改善の効果が見えないと周りが納得してくれないよ。」と伝えました。今日もキャッチボールをしてくれるのかと期待していた彼は目に見える落胆ようでした。彼も自分の問題を理解しているらしく、一呼吸おいてから彼の方から「薬を飲めばよくなるのかな?」と切り出してきました。僕が「改善する事は大いにありえるよ。」というと、彼は「でも、お母さんが薬は駄目だっていうんだよね・・。」とぼそっと言うと授業中だったこともありクラスに戻っていきました。何とかしてあげたいという気持ちと何も出来ないというもどかしさの中、日だけが過ぎていき結局そのまま僕の中学校でのインターンは終わってしまったのでした。 |