第二十六回 体育館にて (下)

この体育館で行われたカウンセリングはブリーフカウンセリングと言って、問題解決のみに焦点を当てた手法です。古来から行われているカウンセリングとは違い、クライエントの情報集め等に長い時間をかけません。ですので、時間は大幅に短縮され長くても15分で1セッションが終了となります。前のレポートで述べた通り、日に何十人の生徒、そして雑務に追われるスクールカウンセラーにはこのブリーフカウンセリングの技術がとても重要です。今回は僕がそのブリーフカウンセリングを使いこのセッションをどう解決に導いたのかをまとめました。

僕の事は(T(Therapist))で表し彼女の事は(C(Client))で表します。

(T) 学校ではどのような友達がいるの?

(C) ・・・や・・・、それに・・・(・・・=友達の名前)

(T) 彼女たちとは何時頃知り合ったの?

(C) つい最近。彼女たちと知り合ってからかな、自分がいままでしていた事が馬鹿らしく感じてきたのは。

(T) そっか、良い友達に巡り合えたね。

(C) うん。彼女たち薬もやらないし、何よりも勉強に対して真剣だし。最近、私の学校の成績上がったんだ。彼女達と一緒に勉強し始めたからだよ。

(T) 友達は大切だからね。友達によって自分の人生って大きく左右されたりするからね。他にあなたをサポートしてくれる人は?

(C) 先生や教会の神父さんやデイケアーセンターの人たち。皆とても親切にしてくれる。

(T) それらの人たちの期待を裏切らないように、一歩づつ確実に薬から手を引き、悪い友達との付き合いも断っていかなきゃね。

(C) うん。

 このセッションで焦点を当てたのは、自分の周りにいかに自分を助けてくれる人達がいるのかを気づかせてあげる事でした。そうする事により次に自分が悪い友達に悪い方向へ誘われた時に、彼らの事を思い浮かべ断るか、彼らの所へ助けを求めに行けるようになります。このセッションを行った日の午後、僕は彼女に1時間のカウンセリング(本来は15分程度だったのですが、それぐらいの効果を得たという事で1時間と明記しました)を僕の下で受けた旨を記した手紙を渡しました。その手紙を現在彼女がカウンセリングを受けている所のカウンセラーに見せる事により法的義務時間が1時間短縮されます。インターン生も立派なカウンセラーなのです。

 アメリカの多くの子供達は両親の離婚そして貧困の為、親が四六時中働かなければならない、もしくは親自体の子育ての能力、社会的能力の低さから何時でも孤独です。その孤独を紛らわせる為に薬に手を出したり、反社会的行為を行ったりするのです。彼女の親は薬に手を出し、現在服役中です。薬が悪いわけではない、薬に手を出させてしまう環境が悪いのです。

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