第二十八回 兄弟喧嘩 (下)
 その騒動が終わると、サックストーン先生がどこからともなくやって来て、周りにいた先生方から事情を聞いています。事情を聞き終わると、サックストーン先生は副校長先生のオフィスへ行き、先生から聞いた事を説明しました。アメリカでは喧嘩等の教育的指導は校長先生や副校長先生の仕事で、先生はクラス内で起きた問題にはある程度対処しますが、基本的には教える事が仕事です。

 しかし、当校の副校長先生はカウンセラーをもっと活用しようという考えの持ち主で、この件をサックストーン先生にも関わるように促し、二人の内一人は副校長先生と話、もう一人はサックストーン先生と話すという結論になりました。話に聞くと、前述した通り彼らは喧嘩の多い兄弟で、ひどい時には血を流すほど殴りあった事もあるらしく、何度か親を呼んだ事もあるそうですが、親もどうしたら良いのか分からないようです。

 先生は「また、あの二人か・・」とため息をつくと、一方の生徒をオフィスに構内放送で呼び出しました。まもなくして、その生徒が現れると二人はオフィスにある大きめのテーブルに座り、今回の件について話始めました。

先生: あなた達、これで何回目だと思ってるの?

生徒: だって、あいつが俺の事を勉強が出来ないとか、頭の回路がいかれてるとか言うから。

先生: もう一人の方は今、副校長先生が話しをしているから。さっき、副校長先生と話したんだけど、これからは二度と学校内で喧嘩をしないという誓約書をあなた達二人に書いてもらうことにしたから。

(紙を渡す)

生徒: そんなのやりすぎだよ!

 そう言い残すと、その生徒は先生の許可なくオフィスを出ていきました。先生から「ちゃんとクラスに戻るかみてきて。」と言われたので、その生徒を後ろから追っていくと、途中トイレに寄った以外はまっすぐに戻っていったので一安心です。

 僕がオフィスに戻ると先生は「何時もこの調子なの。」と僕に説明しました。僕が「これからどうするんですか?」と聞くと、「後は校長先生と副校長先生の仕事だし、昼になればどうせ仲良く一緒にランチを食べてるわよ。」との答えでした。

 僕とサックストーン先生は毎日12時になるとカフェテリアに行って、生徒が問題を起こさないか、食べ終わったらちゃんと後片付けをするかという事を監視する仕事があったのですが*、その日も12時にカフェテリアに行くと、先生が言った通り二人は笑い話をしながら食事をしていました。

 アメリカの教育は喧嘩と教師への反抗に対してとりわけ厳しく、その二人の生徒は次の日から数日間謹慎処分となったのでした。

*アメリカの中学生は自分の学年のランチの時間になるとカフェテリアに行って食事をします。食事は誰と食べても良いですが、一度席に座ったら先生の許可なしに立ち上がったり、席を移動したりしてはいけません。食事が終わると、生徒は静かに手を上げ、先生に自分の食事が終わったという事を知らせます。先生は(カフェテリアの監視は校長先生、体育教師、カウンセラー、教員アシスタント等の教師以外の人間が担当になります。ちなみに、副校長先生は別室で問題行動を起こし、カフェテリアで他の生徒と食事をする事を許されない生徒達の監視をします。)その生徒が全てのゴミをトレイの上に乗せた事を確認してから、退出を許可します。

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