第二十九回 切れる生徒 |
| 以前お話した、行動的な問題を抱える生徒が集まるBD(Behavior Disorder)クラス。大体の生徒はある一定のクラスの時間だけ、そのBDクラスに行くのですが、数人の生徒はあまりの素行不良ため、体育、美術、音楽等の芸術の時間以外はそのクラスに一日いる事が義務付けられていました。僕がまかされた一人の生徒も1日中BDクラスにいる事を義務付けられた生徒でした。初めて彼に会った時は「小学生かな?」と見間違うぐらいの小さな体つきという事もあり、純粋で可愛い生徒だなという印象でした。何時も、そのクラスに行くと「一緒にゲームしようよ〜」と誘ってくれ、帰ろうとすると「もう帰るの?」と寂しそうにしてくれる。僕もその子に会うのが非常に楽しみでした。
しかし、もちろんBDクラスに入れられているぐらいですから一筋縄ではいきません。何かの拍子に一度切れると歯止めが利かなくなります。先生を汚い言葉でののしり、物を投げ、あたりの物を壊し・・・。一度切れさせてしまうと、落ち着かせるのにそうとうの時間と労力が必要になります。 このような生徒に特有しているのは、自分が悪いという感覚が無いことです。「あの子が」「あの先生が」「学校が」等、全て人のせいなのです。自分は正しい事をしているのに周りが自分をいじめているという妄想が常に頭の中にあります。ですのでカウンセリングもまず、自分が悪い事をしているという認識をさせる事から始めなければなりません。指示的に行うとすぐに切れてしまうので、非指示的に。しかし、そうすると今度は気づかない。それではと、また指示的なカウンセリングを行うと切れてしまう。。。その子とのカウンセリングは毎回試行錯誤でした。 そのような生徒の親は大抵、学校よりも自分の子供の言っている事を信じ、「うちの子は悪くない。先生がうちの子をいじめているんだ。」と突っかかってきますが、幸いにも彼の親(母親)は彼の素行についてしっかりとした理解をしていました。しかし、親は親で言葉使い、その他マナーはとても良いとは言えなく、この子は母親の行動を近くでみて育ってきたんだなと容易に想像が出来ました。 子は親を見て育つ。しかし、さすがに親にカウンセリングを行うわけにもいきません。じゃあ、何とか子供だけにもとカウンセリングを試みるのですが、上記に述べました通り中々思うように進みません。さらに、何百人の生徒そして様々な雑用を扱うスクールカウンセラーにとって一人の生徒に長い時間をかけていられないのも現実です。結局、たいした結果を出せないまま、僕のインターンは終了となってしまったのでした。 以前にお話した少年とこの少年は、僕がカウンセラーとして始めて味わった挫折として、今でも強く印象に残っています。うぬぼれていたわけでは無いのですが、色々な勉強を重ね、大学ではカウンセラーとしての能力を高く評価され、そして幸運にもその時点までに出会ったクライエントには全て結果を出してきたこともあり、自分の能力を少々過信していた所がありました。時間があろうが、無かろうが、場所がどこであろうが、相手が誰であろうが自分ならきっと上手く出来ると・・。しかし、現実問題としてスクールカウンセリングにはやはり限界があり、そして、なによりも自分自身の人間として、そしてカウンセラーとしての未成熟さを痛感させられました。彼らには本当に感謝しています。なぜなら、彼らが僕を本当のカウンセラーにしてくれたのですから。
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