第三十回 打ち上げ |
| 人として、カウンセラーとして学ぶ事の多かった中学校でのインターンも残す所あとわずかとなった頃のお話です。その日は年度最終登校日の翌日、つまり冬休みの初日ですが、先生の冬休みは生徒達よりも1日遅れで始まります。僕が何時も通り学校に行くと、し〜んとした空気が流れています。生徒のいない学校はこんなにも静かだったのですね。それでも、学校の主役である生徒のいない学校にいるのは何か物悲しさを感じさせます。
この日、午前中は先生は各部屋で仕事。僕は特にやる事は無かったのですが、何とかインターンを早く終わらせたかったので学校に来てしまいました(実は数日前にこのペースで行くとインターンを終えるのは学校を卒業するぎりぎりになってしまう事に気づいたのです)。カウンセリングルームに入ると、サックストーン先生はもう来ていて、何かしらの仕事をしている最中でした。僕は一言挨拶をし、机に座ると何をするわけでもなく、ぼーっと時間が経つのを待っていました。 僕は突然「午後は何するんんだろう?」という疑問が浮かび、サックストーン先生にさっそく聞いてみると、「午後は皆でレストランに行って打ち上げよ。」との答え。先生、聞いてませんよ〜。僕は「あの・・僕も行きたいんですけど・・。」と小声で言うと、サックストーン先生は「あら、そうだったの。今から大丈夫かしら?ちょっと幹事に連絡してみるわね。」と電話をかけました。結果はOK。僕もその打ち上げに参加させてもらえる事になりました。 普段の僕ならめんどくさがり、行かないところですが、何せインターンの身です。経験できる事は何でも経験しておきたい。それに、カウンセラーの仕事は生徒だけでなく、先生との関係も重要です。ですので、こういう先生だけのイベントにも参加したことにより後に、どういう反応、効果があるのかを見ておきたかったのです。 日本で打ち上げと言うと、お酒を飲むというイメージがありますが、キリスト教国家のアメリカはもちろん違います。皆で集まり、食事をするだけ。場所はダウンタウンにあるレストランでした。店内に入ると、奥の方に広いスペースが設けられていました(もちろん、僕が入ろうとすると店員に「そこは・・」と止められたのは言うまでもありません。アジア人の先生なんて感覚はまずこの田舎の人にはありませんから)。 僕が店に入ってまもなくすると、ぞろぞろと先生方が集まってきました。普段は厳しい顔つきをしている先生も、プライベートの時間は笑い話をし合ったり、ふざけあったりと普通の人です(当然か)。 皆が集まり、席に着くとさっそくメニューが配られました。メニューはどうやら牛肉・鶏肉・サラダの3つのメニュー中から1つしか選べないようです。こんなに大勢(40人ぐらい)の人に別々に色々と頼まれては困るからでしょうか?皆がメニューを選び終わると、どこの国でも恒例の上司からのねぎらいの言葉です。この日、校長先生は私用の為、不在だったので変わりに副校長先生が話しました。日本の時はこういう上司の話はえてして長いという印象でしたが、アメリカでは本当に一言です。副校長先生の話の後、学年主任の先生からも挨拶があり、それも終わると料理が配られ始めたので、幹事から神へのお祈りが始まりました(アメリカでは皆が集まり、食事をする時は絶対です)。 今まで、生徒の立場だったので、「先生」という職業の人を深く知る機会はなかったのですが、こうして話してみると、本当に色々な側面を持った普通の人たちです。学校で生徒を何時も笑わせている人が実は穏やかだったり、生徒にいつも厳しく当たっている先生が実はお茶目だったり・・。 食事会も終わりに近づくと来年度の話となりました。予算の話やイベントの話など・・。僕にはほとんど関係の無い話だったので、軽く聞き流していると、「うちで今働いているインターン生(僕の事)から提案のあった、アフタースクールプログラム(課外活動の事)の件ですけど、これから本格的に取り入れていく事となりました。」との声が!実は以前、サックストーン先生に「母子家庭が多いから、アフタースクールプログラムか何かを起こして、コミュニティーとの関係を強化し、一人の子供を学校を含めたコミュニティー全体でサポートしていけるシステムを作ってはどうでしょうか?」という提案をしていたのです。その時、サックストーン先生は「予算の問題とかもあるからね〜」等と言っていましたが、どうやら上まで話していてくれてたようです。 幹事の声で会が終わると、2次会があるわけでもなく、皆一目散に家路に着いていきました。やはり、家庭を大事にするアメリカです。先生同士の会が終わった後は家族の下に一分一秒でも早くという所です。 会に参加してよかったなと思った事は、今まで遠い関係だった先生が身近になったという事です。新しい学期が始まってからは、先生が気軽に話しかけてくれるようになり、そして生徒の問題も積極的に打ち明けてくれるようになりましたから。やはりこういったイベントに積極的に出たほうが良いみたいですね。 |