第三十二回 社会科見学 2 |
僕達のバスは5つのグループが同乗していました。近い場所のグループから順に降ろしていき、ついに僕達の目的地にたどり着きました。入り口はセキュリティーに気を使っている事が良く分かるほど、しっかりしていて、一人一人しか通過できないようになっていました。 全員がセキュリティーのチェックを受けると、僕達は大きな会議室に招かれました。そこで、今日一日担当してくれる職員が紹介され、僕達も一人一人の自己紹介を終えると、今日の日程についての説明となりました。予定では、会社説明のビデオを見た後、グループ全員で工場内見学。昼食を終えた後はグループを分け、それぞれ自分達の興味のある部署を見学という内容でした。 会社説明のビデオによると、どうやら、この会社は化学・鉄鋼系を扱っている会社で世界的にも有名らしいです(後でルームメートに聞きました)。ビデオを見終わると質問タイムとなりましたが、「し〜〜〜ん。」どうやら、皆まだ緊張がとれなく質問できないようです。会社の人も困り果てています。ここは引率先生の腕の見せ所。はい!と手を挙げて「世界各地との取引があるというお話でしたが、日本とも取引はあるのですか?」と尋ねたところ、向こうも「やっと質問がきた。」と胸を撫で下ろし、「ええ。神戸製鋼等と取引があり、年に何度かこの工場に来られます。」という話でした。この後、僕が幾つか積極的に質問すると、生徒も緊張がほぐれたのか徐々に質問を初め、時間一杯まで質問を続けました。 工場見学では広い敷地内、各所にある機械や材料、機械を管理しているコントロールルーム、科学実験室等を見て回りました。一番印象に残ったのは材料をかき回す機械です。遠心力を使い大きな釜の中で石のような物がグルグルとかき回され、溶かされ、最後にはインクの原料となるという事でした。何トンという重さの物を軽々と回せる機械を作れる人間の力はすごいなと関心しきりでした。 工場見学が終わると、待ちに待った昼食の時間です。昼食は定番のデリバリーピザ。工場の人も交えて、皆で話ながらピザを食べました。工場の人から「どこから来たの?」と訊かれたので、「日本です。」と答えると、「日本人には本当にうちは良くしてもらってるんだよ。うちの受注先の第一位は日本だからね。」と言われました。頑張れ日本人! 食事が終わるとそれぞれ見たい部署毎に分かれての行動となります。僕は人数が少なめだったのと、少なからず興味があったので科学研究室の班に入りました。本来なら引率の先生はこの時は控え室等で待っているらしいのですが、僕はなにせ好奇心旺盛なインターン生です。控え室なんかで待っていられません。 ここの研究室では一般的に「どの顔料を使えば、一番良い色がでて、どのような製法を使えば一番効果的に色が抽出できるのか?」という事を研究しているらしく、一日色と戯れる研究員の袖は皆色鮮やかに染まっています。顔料や使っている機械、コンピューターの説明が一通り終わると質問タイムです。案の定、質問は出てきません。また、僕の出番です。興味のあるトピックだった事もあり色々と質問をすると、生徒からも徐々に質問が出始めました。生徒からの質問で一番面白かったのは「この会社は多くの人が博士号を持っているという話でしたが、それぞれをドクター〜(博士号を持っている人間にはドクターと名前の前に付けるのが普通)と呼び合ったりするのですか?」という内容でした。答えは「大抵、誰でも皆ファーストネームで呼び合ってるよ。」という話でした。僕も普段学校では先生には必ずドクター〜と呼んでいるのですが、博士号を持った者同士だと言わないのかもしれません。 時間になったので、元居た会議室に戻り全員がいる事を確認し、今日一日のお礼をすると迎えに来たスクールバスへと乗り込みました。帰りのバスの中では生徒達がその日に経験した事を話し合う光景が見られ、皆が皆とても満足したようでした。 アメリカの社会科見学は日本のそれとなんら変わる事はありませんでした。僕の班はおとなしい子がそろっていたので、問題行動なんかはありませんでしたが、質問をさせるのに苦労しました・・・。何にしろ生徒も皆楽しく、良い経験になったと言っていたのでよかったです。 |