第三十三回 初めての家庭訪問
 インターンも最終日となったその日、僕は一人の先生と一緒に家庭訪問に行く事になりました。僕が関わっていた生徒の一人だったという事もありますし、女の先生一人では何かあった時に大変なので、同行兼、ボディーガードとしてついていく事になったのでした。

 その家庭は市でも有名な程、治安の悪い地域にありました。家に着くと周りにはビール瓶の欠片が散乱しています。僕とその先生はその光景を見た後、お互いに「これから何が起きるのか?」と不安な表情で顔を見合わせたのですが、思い切ってドアをノックしました。前もってこの日のこの時間に訪問する旨を伝えていたのですが、2度3度とノックしても誰からの返事もなかったので諦めて帰ろうとした瞬間、ドアが開き向こうから一人の女性が出てきました。生徒のお母さんです。

 「ごめんなさい。うとうとしていました。」とお母さんは僕達にそう伝えると、家の中に招き入れてくれました。家の中は外見とは違い、綺麗に整頓されていたのですが、一つ一つの物やフロアーは汚れていました。室内を靴を履いて生活しているからでしょうか?

 僕達はそのお母さんに招かれるままにソファーに腰をかけるとさっそく話しを始めました。生まれたばかりの小さい子がいたので、その子に会話の腰を折られたり、テレビが爆音で流れていたので(後でインターンのスーパーバイザーの先生に「何でボリュウムを下げるように言わなかったの?」と突っ込まれましたが、確かにそうですよね。)、お互いの会話が聞きにくい時が多々ありましたが、なんとか彼の学校での様子や授業態度について一通りのお話すると、お母さんも「家でも全然言う事を聞いてくれなくて困っているのです。あの子は私の事嫌いなので・・。」というお返事。やはりどこの国の子でも思春期はあるようです。僕は僕なりに家で出来る事について2・3のアドバイスをした後、その先生も、もう授業に戻らなければならないので話を切り上げて帰る事になりました。

 僕は帰る前にトイレを借りる事にしました。トイレの清潔さをみれば、その家庭のケアー度が計れますし、トイレの前にある生徒の部屋を見たいというのもありました。お母さんが2階にあるトイレに案内してくれると、その途中に子供部屋の前を通ったのですが、何とも言いがたい異臭を放っていました。僕の表情に気がついたのか、お母さんが「子供の部屋見ます?」と訊いてきたので、僕はぜひとその部屋を見せてもらいました。

 部屋の中はベットとTVが一つずつあるシンプルできちんと整理されている部屋でしたが、その異臭が気になります。するとお母さんが「すごい臭いでしょ。どうやら家の息子が以前に寝ぼけて部屋の中で小便をして、そのままにしてあるらしいの。何度も掃除しろと言っているのですけど、全然言う事聞かなくて。。」その後案内されたトイレは綺麗ですが、色々な物があちこちに散乱していました。

 僕達はそのお母さんに感謝の言葉を述べた後、学校へと帰り、サックストーン先生にさっそく報告する事にしました。さすが経験豊富な先生なので、ある程度の状況は予測していたらしいのですが、僕が経験したその異臭に関しては予想を上回る事だったらしく、とりあえずその日の報告書を提出するように僕に言ってきました。後にしかるべき措置を取る為だそうです。

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